シニア・コミュニティ 2019年5・6月号・119号

【特集】社会福祉法人は変わったか。その現状と課題

〚巻頭インタビュー〛 公立大学法人埼玉県立大学 理事長 田中 滋 氏
 ■ 社会福祉法人の役割は、地域課題に取り組む基盤づくり 

 ◎改正の背景  社会福祉法改正の主な背景としては3つあげられます。日本国憲法は公の支配に属さない民間社会福祉事業に対する公金の支出を禁じています。そこで、その規定に触れずにすむよう、行政処分としての措置を民間に委託する社会的装置として、「公の支配に属する」社会福祉法人がつくられ、措置受託を中心とした時代が50年間続きました。
 大きく環境が変わった理由は2000年の介護保険制度発足です。

〚特集・インタビュー〛
  社会福祉法人白十字会理事 白十字ホーム ホーム長 東京都高齢者福祉施設協議会会長 西岡 修 氏
 ■ 持てる強みを存分に生かしたい社会福祉法人

 ◎腰が定まらない日本の社会福祉  今回の社会福祉法改正の背景には、社会福祉基礎構造改革から始まった大きな流れがありますが、果たして「改革」そのものが成功したのかどうか。あるいは社会福祉法人改革についても、「社福の問題」なんですか、ということです。それよりもこの国の社会福祉の在り方が問われていて、そのことについて本当の意味の議論がなされているのかどうか。ノンプロフィットの活動の中で医療などに取り組んでいるアメリカのミッション系団体などをモデルにするのか、あるいはイギリスの国民健康保険(NHS)のようなものを目指すのか。介護保険制度はドイツの制度を参考に作られました。日本の社会福祉をどうするかが定まっていないと思うのです。

〚特集・インタビュー〛 社会福祉法人ほうこうえん 理事長 廣江 研 氏
 ■ 自らの意志で改革に取り組み 地域の福祉を任せられる社福を目指す

 ◎働き方改革と矛盾する効率の悪さ  2017年の社会福祉法改正は「内部留保」の問題から始まりましたが、今でも「この先どうすればいいのか」と思っている法人が多いと思います。何よりも、言われているほど社会福祉法人(以下、社福)はお金がたまりません。利益率が20数%あるところもあるが赤字の法人も多くなってきています。措置の時代と違ってお金の“自由度”はありますが、小泉内閣の社会保障改革で診療報酬・介護報酬などが引き下げられたことで地域医療崩壊などといわれ、さまざまな歪みが生じました。

〚特集・インタビュー〛 社会福祉法人福信会 介護老人福祉施設麦久保園 法人事務局長 中村 浩士 氏
 ■ 幸福寿命を延ばすために社会福祉法人ができること

 ◎自己反省し成長に繋げる  社会福祉法の改正にあたっては内部留保の問題が大きく取り上げられました。それに関しては改正社会福祉法では、内部留保を事業継続に必要な最低限の内部留保と、再投資されるべき内部留保に仕分けるという整理が行われました。背景には地域貢献の在り方があったと思います。社会福祉法人(以下、社福)はしっかり自前で財源を確保したうえで、中核として地域包括ケアシステムを担って欲しいと。その点は現場でも強く感じました。

[介護福祉道場あかい花発 masaの声] 菊地雅洋 北海道介護福祉道場 あかい花 代表
 ■ 特定処遇改善加算の配分について考える

 ■期待を裏切る処遇改善加算  今年10月、消費税の引き上げ分を財源として新設される『介護職員等特定処遇改善加算(以下、特定処遇改善加算と表記する)』は他産業と遜色のない賃金水準を実現するために、経験年数10年以上の介護福祉士について、月額平均8万円の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1000億円(全体の予算規模は2000億円)を投じるものである。この8万円という金額が大きく取り上げられたことで、経験10年以上の介護福祉士の中には「自分の月額給与が8万円アップするのではないか」という期待に胸を膨らませていた人も多いはずだ。

[介護の扉] 藤ヶ谷明子 ジャーナリスト
 ■ 高齢者が認知症を学ぶ場にこそ報奨を

 ■新しい時代の「通いの場」は如何に  2019年3月20日、「健康寿命の延伸」をテーマに開催された未来投資会議。介護予防の自治体へのインセンティブ交付金強化が話し合われた。介護予防インセンティブ交付金などの課題について首相は20年来、執念深く取り組んできたとかで、議長を務める同会議で「予防は金ナリ」と大号令をかけた。目玉のひとつが住民主体の「通いの場」。これをたくさん作り、介護予防の機運をどんどん高めさせよ、ということらしい。ここでいう「通いの場」と厳密に同じなのかどうか知らないが、集いの場所づくりを熱心に行っている地域をたくさん見せてもらった。

[弁護士直伝!介護トラブル解決塾Vol.44おかげさまです、外岡です] 外岡潤 弁護士 おかげさま 代表 
 ■ Q.どのようなケースが刑事事件になるのか

 新しい年号が令和に決まりました。超高齢社会の日本は、これからも「司法」の下で社会を継続させることができるのでしょうか。介護現場の在り方を否定するかの如き刑事裁判が下されたので、今回はこれを取り上げます。

[小島美里の日本の介護を考える] 小島美里 認定NPO法人暮らしネット・えん 代表理事
 ■ 母が逝きました

 1月末に91才で母が亡くなった。9月に胆石が原因の肝膿瘍で入院したのだが、高齢なので薬での治療しか選択できず回復は見込み薄との病状説明だったが、予想外に2ヶ月足らずで退院した。けれども多少リハビリしてきても、それまでようやくできていたトイレへの行き来などがさらに困難になった。この数年はデイサービスと訪問マッサージを利用してきた。ショートステイは何回かすすめてみたが、そのたびに「どうして?ひとりでいられるのに」とこばまれた。妹が母ひとりで置いて出掛けられない状態だと理解できない軽度の認知症でもあった。

[山谷クロニカル(最終回)] 甘利てる代 介護福祉ジャーナリスト
 ■ 「自立」と「共存」が交錯する町

 ■30歳の路上生活者  桜の開花予報が聞こえ始めたある日の「いこい」(通称の呼び名・東京都台東区)。いこいは山谷にある訪問看護ステーション「コスモス」(NPO法人訪問看護ステーションコスモス)が路上で生活する人たちのために、月に2回(第一と第三の土曜日)開いている無料のデイサービスだ。
 厳しい冬をやり過ごした路上の人たちの表情もどこかホッとしているように見えるのは、考えすぎだろうか。それでも、 夏に「いろは通り」のアーケード屋根が撤去されているから、雪こそ積もらなかったとはいえ、今冬の寒さだって相当だったに違いない。そんなことを考えながらいろは通りを行く。

その他コンテンツ

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税込価格 1,000円 + 税/定期購読(6冊分):6,000円(送料別)
体裁 A4変形判56ページ
発行日 2019年5月15日

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