シニア・コミュニティ 2018年9・10月号・115号

【特集】健康と食、こころまで…高齢者の「在宅生活」を支える

〚特集・インタビュー〛 日本社会事業大学専門職大学院 教授 井上由起子 氏
 ■ 福祉の視点で支える高齢者の住まいとコミュニティ

 ◎地域に立ち上げた「食堂」という場  居住するマンションの隣りに社会福祉法人が経営する小規模多機能とグループホームがありまして、そこの地域交流スペースを使って「地域食堂」を月に1回開催しています。同じマンションに住む7 名の方と住民団体を立ち上げて…。制度やお金では手に入らない「場」を地域に作りたかったのです。町内会と社会福祉法人と私たち住民団体の共同開催なのですが、町内会と一緒にできることは、立ち上げたばかりの住民団体にとっては信用という面でものすごく有難いですね。民生委員の方も協力してくれています。。
 対象はこの地域に住む子どもたちと高齢者、それに障がいを持っている方たちです。毎回、いろいろな方が参加しています。

〚特集・インタビュー〛 株式会社コミュニティネット 代表取締役社長 須藤康夫 氏
 ■ コミュニティづくりから始める高齢者住宅背景にあるのは「入居者第一主義」という考え方

 ◎入居者の生活重視を第一に  当社はサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)および有料老人ホームを中心に事業展開していますが、運営にあたって私たちがポイントとしているのは「入居者第一主義」です。お仕着せのサービスを提供するのではなく、入居者の生活を主体に考える。憲法における国民主権ならぬ「入居者主権」ですかね。私たちは施設のことを「ハウス」と言っているのですが、殆どの高齢者の方にとっては“終の棲家”ですから、そういった意味でもその人たちの生活を何よりも重視しなければならないと思うのです。
 事実、私たちのハウスにお住いの高齢者の方はとても自主性が高い。ハウス運営の一端を担っていただいています。

〚特集〛 分散型サ高住「ゆいま~る大曽根」に見る住まいとコミュニティの新しいカタチ

高齢者にとって理想の住まいとは何だろうか。
ことに、これからも増え続けるであろう一人暮らしまたは高齢者だけの世帯が、最後まで安心して身を置く場所はあるのだろうか。人は人との関わりの中でしか生きて行けない。
何よりもコミュニティに溶け込んで暮らせることが望ましいのではないか。
名古屋に向かった。住まいとコミュニティの新しいカタチを分散型のサービス付き高齢者向け住宅(サ公住)である「ゆいま~る大曽根」に見るためである。

〚特集・インタビュー〛 株式会社コミュニティネット 企画開発部長 西尾弘之 氏
 ■ 分散型サ高住の可能性を拡げる“福祉”との連携 高齢者を取り巻く問題は「街づくり」の中で解決する

コミュニティはカタチになってこそ信頼を得ることが出来る。自らの生活を託すことが出来る。住まいはコミュニティとの繋がりの中になければならないのではないか。ことに高齢者にとっての住まいは…。“福祉”との連携で分散型サ高住の可能性を広げる「ゆいま~る大曽根」に大きなヒントがあった。

〚インタビュー〛 NPO法人ホッとスペース中原 代表 佐々木 炎 氏
 ■ 老いは地域共生社会の源でありコミュニティを支えるツール 老いを高齢社会の「恵み」と考える

介護事業所が地域コミュニティに溶け込むのは簡単ではない。関係性をいかに築いていくか。
地域包括ケアから地域共生社会へ、大きな転換期を迎えようとしているいまこそ真剣に、気概を持って地域と向き合わなければならないという佐々木氏。
事業所では葬儀まで行い、グリーフケアにも取り組む意図は何処にあるのか。

[介護福祉道場あかい花発 masaの声] 菊地雅洋 北海道介護福祉道場 あかい花 代表
 ■ 従業員を護るために事業者としてしなければならないこと

 ◎深刻化する介護職へのハラスメント  労働組合「日本介護クラフトユニオン」(東京)が今年4月~5月に実施した「ご利用者・ご家族からのハラスメントに関するアンケート」の結果報告によると、介護職の74.2%が高齢者やその家族からハラスメントを受けた経験があり、そのうち40.1%がセクハラに該当する行為を受けたとされている。中でも利用者の自宅が仕事場となる、訪問介護員の被害が多いという内容になっている。
 これらの行為は、見当識が低下した認知症の利用者によって行われる行為とは限らず、正常な判断能力が保たれていると思われる要支援者や要介護者によっても行われ、前述したように介護を必要としない家族による行為も含まれている。

[小島美里と日本の介護を考える] 小島美里 認定NPO法人暮らしネット・えん 代表理事
 ■ 「生産性がない」という言葉に潜む深い闇

 『酷暑』という言葉がぴったりの夏である。まず、穏やかな地域と信じこんでいた中国地方を中心に200人を超える死者を出す豪雨災害に驚いた。災害の全容が見えないうちに、今度は連日異常な高温に突入、こちらも災害レベルだ。確かに経験したことがない暑さである。全事業でトータル600名を超える在宅高齢者・障がい者が利用している暮らしネット・えんは緊張の日々だ。ヘルパーやケアマネジャーから「いくらお願いしてもエアコンをつけない」「足元が暖かいと思ったらホットカーペットがON になっていた」、などの報告が上がってくる。利用者だけでなく、訪問介護のヘルパーの身も危険な状態だ。移動手段は自動車・バイク・自転車といろいろだが、訪問先に着いたころにはゆで上がっている。

[介護の扉] 藤ヶ谷明子 ジャーナリスト
 ■ 惰性のサービスは困るがイケイケ法人の合理主義に不安

 数年前、地域包括支援センター業務を受託する特養を訪ねたときのこと。6階建ての大きな施設は受付に誰もいない。声をかけても気配がないのでズラリ並んだ福祉用具の奥へ進む。パーテーションの向こうに見えたポロシャツ姿に用向きを伝える。不審者ではないという確認が取れたようで、入口のソファで待つよう指示が出た。
 施設案内を手に取る。14年前の開設当初に作成したものだった。グレーのズボンに開襟シャツの施設長だという男性が来たが、挨拶が終わると同時に踵を返された。直後に現れた女性が「多忙な施設長に代って自分が話をする」という。
 フロアへの案内を頼んでエレベータに乗り込む。「担当する予定だった者が突然、休んでしまいまして」。女性が溜め息をつく。

[弁護士直伝!介護トラブル解決塾Vol.40おかげさまです、外岡です] 外岡潤 弁護士 おかげさま 代表 
 ■ Q.職員のミスによる誤薬が無くならない…

介護現場の永遠の課題、それが「誤薬」問題です。つい最近も、横浜の病院で元看護士が患者に投与する点滴に界面活性剤を混入させ中毒死させたというショッキングな事件が報道されました。「クスリはリスク」とは言いますが、どのように現場で事故予防に取り組めば良いのでしょうか。

[山谷クロニカル(7)] 甘利てる代 介護福祉ジャーナリスト
 ■ 路上の人たちと対等な関係でつき合う

 ◎女性の路上生活者は少ない  訪問看護ステーションコスモス(東京都台東区・NPO 法人訪問看護ステーションコスモス)が路上で暮らす人を対象にしたデイサービス、通称「いこい」(正確には憩いの間)は月に2回の開催だ。大抵20?30人ほどやってくるがそのほとんどは男性で、女性の常連さんが1 名いる程度。他に女性の姿をみることはない。
 ただ全く来ない訳でもなく、思い出したようにやってくる。こんな人もいた。

 北海道岩見沢 北海道岩見沢 クピド・フェアに見る共生社会
    オンリーワンの技術が障がい者の生きがいを育て福祉で地域を支えるセンターを目指す

東京オリンピック・パラリンピックが間近に迫っている。中でも、パラリンピックは前回の東京オリンピックから始まったことを知る人は少ない。先日、NHKで大分県別府市にある障がい者の授産施設・太陽の家を創設した中村裕博士を描いたドラマが放送された。障がい者に向けて語った中村博士のひと言が心に残る。「失った機能を悲しむのではなく、残った機能を使って前向きに生きなさい」。正確ではないだろうが、おおよそこの様な意味であったと思う。残された機能を使って、前向きに人生を生き抜く。パラリンピックはこのひと言から始まり、障がい者スポーツの隆盛へと繋がって行くことになる。
障がい者を含めた地域共生社会の担い手として、地方に根ざす授産施設が果たす役割の大きさに、改めて注目が集まろうとしている。

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           介護事業におけるリーダーの在り方をオレゴン州立大学に学ぶ
[コラム]編集人のひとりごと
税込価格 1,100円(税抜価格1,000円)
体裁 A4変形判56ページ
発行日 2018年9月15日

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