シニア・コミュニティ 2018年3・4月号・112号

【特集】健康と食、こころまで…高齢者の「在宅生活」を支える

〚巻頭インタビュー〛 全国生活協同組合連合会 常務理事 千田 透 氏
 ■ 報酬改定を機に考える日本の福祉と介護 その課題とあるべき将来像

 俄かに「人生100 年時代」と言われ始めた。そして今、新たな介護報酬のもとに、新たな一歩を歩み出そうとしている。立ち止まって考える暇もなく、時間が流れて行く。日本の福祉はこれでいいのだろうか。国は国民をどの様な社会に連れて行こうとしているのか。不安をぬぐうことは出来ない。
 今、当たり前のように動いている制度は、果たして最初に構想されたものなのであろうか。その精神は、真意はどこにあったのか。「基本」が歪められたままで突き進んでいないだろうか。
 厚生労働省の老健局に在籍し、介護保険初の報酬改定を手掛けた千田透氏は、介護保険制度創設時から今に至るまでの道筋を知り尽くす。その一端に耳を傾けたい。

〚特集・インタビュー〛 東洋大学 ライフデザイン学部 准教授 渡辺道代 氏
 ■ 介護する家族を直接的に支え、地域の担い手が育つ仕組みづくりを

 言うまでもないが、介護保険制度は基本的に高齢者を支えるシステムである。しかし、制度や介護事業者だけが高齢者を支えているわけではない。中でも、高齢者の「在宅生活」を支える家族の果たす役割はとてつもなく大きい。それゆえ、抱えている問題も限りなく大きい。制度や社会の仕組みは、果たしてここに光を当てているだろうか。  長期間、自らも家族を支え続ける渡辺道代氏の“思い”を通して、支援の在り方を考えたい。

〚特集・インタビュー〛 口腔機能支援センターさいわい センター長 本間久恵氏
 ■ 口腔ケアを食事とワンセットで考えて 高齢者の在宅生活を支える

 食べることは、人間が“命をつなぐ”うえで最も重要であることに違いない。“人間らしく”生きていくうえで、いつまでも当たり前に口から食べることにこそ、価値を見いだすべきではないだろうか。
 口は健康に関するあらゆる情報を教えてくれる。口の中を清潔にすることが、QOLを保つ第一歩なのだろう。
 川崎市幸区で口腔機能支援センターを立ち上げ、口の健康を通して高齢者の在宅生活を支える本間久恵氏から、口腔ケアの何たるかを学びたい。

〚特集・インタビュー〛 (株)ケアサービス 第1事業部配食サービス課 課長栄養管理士 栗原明子 氏
 ■ その人の食べる能力に合った形態で提供するデイサービスの「食」が支える在宅生活

 ◎気持も満足する普通の食事  私は特別養護老人ホームを経て、現在はデイサービスで高齢者の「食」に関わっていますが、以前から嚥下障害が起きてものが食べにくくなった方の食事に、疑問を持っていました。刻みから始まって、最後はどろどろのミキサー食になっていく。そんな“悲しい”食事にならずに食べて行く手立てはないものか、と思っていた時に出会ったのが、黒田留美子氏考案の「黒田式高齢者ソフト食」でした。形や見た目は常食と変わらないこの食事は、加熱によって軟らかくなる食材を選び、口の中で“ばらけない”工夫が施されています。この食事を提供することによって、食べる力が少しずつ落ちている方にも、食べる楽しみを変わらずに味わっていただいていると思っています。

[介護福祉道場あかい花発 masaの声] 菊地雅洋 北海道介護福祉道場 あかい花 代表
 ■ 共生型サービス創設の先に見えるもの

 ◎高齢者と障がい者をともに受け入れる共生型サービス  来年4月以降、訪問介護・通所介護・短期入所生活介護の3分野で「共生型サービス」が創設される。共生型サービスとは介護保険サービスと障害者福祉サービスの垣根を越えて、高齢者と障がい者をともに受け入れるサービスである。
 しかし現在でも介護保険と障害福祉の両方の運営基準を全て満たしている事業所であれば、事実上、共生型サービスを実施しているとも言える。例えば訪問介護事業所が、介護保険と障害福祉サービスの両方の指定を受けることで、高齢者と障がい者に対し訪問介護サービスを提供して、それぞれの制度から既定の報酬を得ているという事実がある。これも共生型サービスと言えなくもない。

[小島美里と日本の介護を考える] 小島美里 認定NPO法人暮らしネット・えん 代表理事
 ■ 介護保険にも『重度訪問介護』を

 1月26日、社会保障審議会介護給付費分科会は平成30年度介護報酬改定案を了承した。この日政治判断でプラス0.54 パーセントのプラス改定となったことについては、経済団体や健康保険組合からは強い反対意見が出た。いわく「持続可能な制度にするためにマイナス改定は必須」、「給与の上昇分から社会保険料を差し引くと上げ幅が小さくなる」など。『介護離職ゼロ』などどこ吹く風、2号保険料は「老親への仕送り相当」であることをお忘れなのだろうか。介護保険サービスが細ればそれだけ離職者は増えるに決まっている。

[介護の扉] 藤ヶ谷明子 ジャーナリスト
 ◎ 「認知症がよくなる」ブーム再燃のワケ

 ■自立を叶える「4つの言葉」  取材先から「資料にどうぞ」と頂戴した冊子に特養の記事が載っていた。笑顔の施設長と明るいデイルーム。見出しに「クソ」の文字が大きく踊る。同じ頃、介護職の知り合いからラインが届く。「1日1,500ml の水を飲むと認知症がよくなるってホント?」。この偶然は何だろう。どうしたのかと返信すると、昨年末、この件がテレビで放送されたのを機に、自施設でも採用しようとの声が上がってきたのだという。以前、NHKが特集したこともあったそうで、施設や個人のブログでも話題になっているとか。

[弁護士直伝!介護トラブル解決塾Vol.37おかげさまです、外岡です] 外岡潤 弁護士 おかげさま 代表 
 ■ Q.技能実習制度以外に「使える」ルートは?

こんにちは、外岡です。本号では前前号の続き、外国人の介護現場への導入について、技能実習制度以外の方策を中心に解説します。

[山谷クロニカル(4) 山谷を第二のふるさとにする人々] 甘利てる代 介護福祉ジャーナリスト
 ■ アーケードの屋根が消えた

 正月気分がまだ抜けきらない1月の第一週土曜日、「訪問看護ステーションコスモス」(東京都台東区)が自主運営している、路上生活者を対象にした土曜日デイサービス「いこい」に行く。
 穏やかな小春日和だ。「いこい」があるいろは通りが見えて来た。ところがだ。いつもと何か違う。目をこらしたがぱっと見には分からない。歩を早めて近づくと理由が判明した。アーケードの屋根がなくなって、これまでと違って通りが妙に明るいのだ。

[われらがHOPEを探せ!] 株式会社フューチャーアライブ ■「育成」をキーワードに、介護人材の発掘に奮闘する

 今回の「われらがHOPE」は、HOPE という言葉からくるイメージと少し違うかもしれない。かつて中学校の校長先生であり、あと数年で古希を迎える野崎俊二さんが、介護の世界に飛び込んだのは2年ほど前。教育に携わった経験を買われて、新たな視点による介護人材の採用と育成を任されている。熱意は誰にも負けない。人材発掘に知恵を絞り、ビジョンを持って行動する。代表の田島美穂氏が言う。「わが社のHOPE です」。
 いま、しきりに「働き方改革」などと言われている。しかし“働き方”の前に、年齢を超えて「働く」ことを積極的に奨励し、そのための“環境”を作る事こそ、人材不足を補う上で急務ではないだろうか。そういった意味で、野崎さんは紛れもなく「定年世代」のHOPEである。

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税込価格 1,100円(税抜価格1,000円)
体裁 A4変形判56ページ
発行日 2018年3月15日

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