シニア・コミュニティ 2016年11・12月号・104号

【特集】

≪巻頭インタビュー≫ 「市民一人ひとりの意識が地域包括ケアシステムを動かす」

NPO 法人「楽」理事長 柴田範子 氏 地域包括ケアシステムを動かすのは誰か。長く地域に密着し、リアルな現場を見続けるNPO法人「楽」の理事長柴田範子氏は、地域包括ケアシステムの行方を左右するのは「市民の意識」だと言う。そのためには市民自ら意識を変えなければならない。柴田氏への取材を基に、地域包括ケアシステムのあり方について考えてみたい。

 地元企業との連携が地域包括ケアシステムを深化させる

網の目が大きくなったセーフティネット  最近、孤独死を取り上げたNHKの番組が話題になっている。特に20代から40代の若い世代が関心を寄せたという。将来の自分の姿に重ね合わせたのであろうか。明日が見えにくい時代を背景に、地域包括ケアシステムが本格的に動き出そうとしている。しかし、孤独死に象徴されるように、人と人とを繋ぐ“網の目”がどんどん大きくなり、その隙間からこぼれ落ちる人が後を絶たないという現実が行く手に横たわる。
 地域包括ケアシステムが社会のセーフティネットのひとつであるならば、地域を巻き込んでその網の目を限りなく細かくし、救うべき人を救うシステムに深化させなければならない。しかし、何かが足りない。そう考えていた矢先に出会ったのが、川崎駅周辺で手広く不動産業を営む第一ハウジング株式会社の代表取締役加藤豊氏である。

≪インタビュー≫ 行政の経営力と住民の意識が問われる地域包括ケアシステムの行方

明治大学理工学部建築学科専任教授・博士(工学) 園田眞理子 氏 地域包括ケアシステムを建築、街づくりに関わる立場から見た時、何が見えて来るのか。
制度の中にどっぷりと浸かり、内向きの発想に陥りがちな介護事業者には見えてこないものがあるに違いない。平面からだけでなく立体的に地域包括ケアシステムを見た時、そこには日本の高齢社会へのヒントが隠されている。長く高齢者住宅に関する研究に取り組み、高齢時代に対応する建築及び都市計画のあり方とは何かを追い求める、明治大学の園田眞理子専任教授に話を聞いた。

 新しい試みで一歩先を行く川崎市 高齢者支援事業への挑戦

川崎市は平成26年度から重点的に取り組んでいる「かわさき健幸福寿プロジェクト」や平成28年4月から実施している総合事業など独自の施策を次々と打ち出し、他の一歩先を走っている印象だが、果たして生みの苦しみはないのか。来年度からすべての自治体で総合事業が本格的に始まるが、約3割の市町村ではすでにスタートを切っている。川崎市もそのひとつだ。
総合事業の開始に伴って、事業費に上限が設けられるという自治体にとっては重い“課題”がある。さらに、事務処理を含めて総合事業への円滑な移行も迫られている中で、来年度は介護保険制度改正に向けた作業が本格化する。地域包括ケアシステムの構築を見据えた川崎市の“挑戦”を健康福祉局に聞いた。

[特別コラム] 待ったなし!社会福祉法改正で生じるリスクと採るべき方策

介護・福祉系法律事務所「おかげさま」代表 外岡潤 こんにちは、外岡です。全国の社会福祉法人の皆様は、年末に向けて法改正への対応に大わらわな時期かと思います。来年4月からは問答無用で新体制に移行し、理事と兼任できない独立の評議員を最低4名揃えなければならないところ、「評議員は役員の選任権という強力な権限を有する様になり、責任も重くなるというし、報酬を上げた方がいいのかしら…」等など、悩みは尽きないところですね。その他公益活動に充実計画の提出、大規模法人は加えて外部監査も受けなければならず輪をかけて大変ですが、まずは法人運営の要となる意思決定プロセスから着手されると良いでしょう。
本コラムでは、理事会と評議員会の関係について集中的に解説します。

[経営課題] 介護福祉道場あかい花発 masaの声 注目されている混合介護を考える

菊地雅洋 北海道介護福祉道場あかい花 代表  介護保険の対象となるサービスと、保険の対象外で利用者が全額を自己負担する保険外サービスをあわせて提供する「混合介護」が注目されている。国も混合介護を推奨する方向に舵を切っており、政府の規制改革推進会議は、現在原則禁止されている保険給付サービスと、保険外サービスを同時一体的に提供することの規制緩和を議論している。それとは別に、公正取引委員会も混合介護を利用しやすくする弾力化措置を求める報告書をまとめるなどしている。
 このことは事業者にとってもビジネスチャンスであり、保険給付と一体的に保険外サービスを提供できることで、介護職員の待遇改善にもなるとアピールする向きがある。さらには自由価格の導入で、消費者目線で対価に見合った良質のサービスを選ぶことにもつながり、事業者・消費者双方にメリットがあると主張する人がいる。しかし僕はそう思わない。

[経営課題] シリーズ・介護の扉 犯罪の引き金は誰が引くのか

―― 好感を持っていなくても、信頼関係なしには成り立たない訪問介護。人と人が支えあう場面で今、何が起きているのか。 ――
善意を悪用した罪の重さ  少し前、35歳のケアマネが利用者の口座から預金を引き出したという事件が報じられた。「利用者がカードを紛失した」と銀行に説明し、再発行したカードを使った犯行だという。引き出した金額は600万円とも1,500万円とも報じられており、数か月にわたって盗みをはたらいていたと想像される。いわく、「認知症だから、しばらくはバレないと思った」。ぞっとする言い訳である。
 「認知症だから」。この枕詞ほど残酷な表現はない。対人援助を業とする者にとって、最大の禁句であるはずのコトバが容易に出てくることが恐ろしい。彼が『泥棒』を決め込んだキッカケは何だったのか。お決まりの“出来心”だろうか。

[経営課題] シリーズ・小島美里と日本の介護を考える

認知症高齢者は一人で出歩いてはならないのか~利用者行方不明事件の裁判結果に思うこと~  今年の9月9日、デイサービスをひとりで抜け出し、3日後に低体温死状態で発見された認知症高齢者(76歳女性)に関し、遺族が社会福祉法人に損害賠償を求めた裁判で、福岡地方裁判所は総額2870万円の支払いを命じる判決を出した。職員がふと目を離した隙に非常口から外出し、発見が遅れたために凍死してしまった痛ましい事件だ。被告側に施設規準等の違反はなく、ケアに当たっていた職員の「注視(見守り)義務違反」として、原告遺族側の賠償額は全額認められた。
 認知症の高齢者がひとり歩きして亡くなったという点では、社会的な注目を集めたJR東海の踏切事故と共通だが、この事件の注目度ははるかに低い。しかし、介護サービスを提供するものにとっては、前者以上に重要な判決であり、認知症介護の現状を踏まえて発信していく義務もある。

[経営課題] 特別寄稿・介護の生産性を考える

「1億総活躍社会」で介護の生産性向上と言われています。しかし、介護の生産性向上と聞いて、違和感を抱く方も多いと思います。この違和感が何に起因するのか考えてみます。
1.介護の生産性向上への違和感・・・ 2.何故介護の生産性向上と言われるのか・・・

その他コンテンツ

[コラム]連載第43回 聖隷福祉事業団に学べ
[コラム]《老人たちの居場所》 「近頃の若者は」を撤回する
[World News]連載第16回 イギリスのホームドクター、認知症ケア、ホスピスの実情を探る
[World News]連載第23回 オランダの新しい介護事情を探る
税込価格 1,100円(税抜価格1,000円)
体裁 A4変形判56ページ
発行日 2016年11月15日

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